2021.05.04 Tuesday
おのころ雫塩(淡路島/2021年4月19日)
飲食の仕事で全国を転々としていた末澤さんが、人間が生きていくのになくてはならない「塩」の製造に興味をもち、1993年に淡路五色浜に移住。脱サラファクトリーという会社を立ち上げ、自凝(おのころ)雫塩としての活動を始められました。海に面した荒れ放題の土地を借りて、大規模な機械を使わずに自らの力で草を刈り開墾されたそうです。
普段の料理でもいちばんと言っていいほどよく使う塩ですが、海水からできているという漠然としたイメージしかなかった私たちにとって、末澤さんの塩作りは想像を遥かに超えるものでした。
末澤さんが目指すのは、古代海水に近い濃度の塩。それは人が美味しいと感じる塩分濃度であり、また私たちがお腹の中にいた頃の羊水の濃度と同じとされているそうで・・初めて知りました。
海の水が澄んでいる満潮の頃に海水を汲み上げ、逆浸透膜で濾過して効率よく濃縮。布がついた風車のようにくるくる回る装置の上から海水を落とし、太陽と海風の力で、上から落ちてきているところを見学しながら、いったん濃縮された海水を味見。もちろんしょっぱいですが、軽い苦みと海藻のような風味、旨味を感じました。
次に、その横の小屋にある鉄釜で30時間、薪を燃やしてじっくり炊き上げるうちに、塩の花といわれる美しい塩の結晶が浮かび上がってきます。そうして煮詰められた塩は同時に生じたにがりとともに杉樽で寝かされます。樽の中にはきらきらと美しいピラミッド型となった結晶があり、柔らかく甘みを伴う味わいの見事な塩が出来上がっていました。
この丁寧な工程を経て取れる塩は海水100トンに対して100キロ、つまり1/100とわずかな量です。
日本は世界でも一番塩の作り方が多いといわれているそうで、「どれが正解かではなく、どんな塩を作りたいか」と繰り返し話されていた言葉に、末澤さんの強い志とこだわりが伝わってきて、ありがたくいただきたいと思いました。